仕事中や通勤中の事故で労災を使ったとき、「どうせ賠償金から差し引かれるなら同じでは」と思っていませんか。実は労災給付のうち特別支給金だけは扱いが違います。加害者からの賠償金と重ねて受け取れる、実質的な上乗せ分です。請求しなければ受け取れないため、知らないまま終わると数十万円をそのまま失います。この記事では、特別支給金が差し引かれない理由と具体的な上乗せ額、請求のタイミングを、FP2級の資格を持つ運営者が計算例つきで整理します。
特別支給金は賠償金から控除されない
結論から書きます。労災の休業(補償)給付は加害者への請求額から差し引かれますが、休業特別支給金は差し引かれません。最高裁が平成8年2月23日の判決で、特別支給金は損害を埋めるためのお金ではなく、被災労働者の福祉を目的とした事業だと判断したためです。
同じ労災から出るお金でも、性質が違うと扱いが分かれます。ここを知らないまま示談すると、受け取れたはずの上乗せ分を取り逃がします。
労災給付の「控除される・されない」早見表
実際に何が差し引かれ、何が残るのかを整理します。
| 労災からの給付 | 金額の目安 | 賠償金からの控除 |
|---|---|---|
| 休業(補償)給付 | 給付基礎日額の60% | 控除される |
| 休業特別支給金 | 給付基礎日額の20% | 控除されない |
| 障害(補償)一時金 | 14級なら給付基礎日額56日分 | 控除される |
| 障害特別支給金 | 14級なら8万円(定額) | 控除されない |
| 障害特別一時金 | 14級なら算定基礎日額56日分 | 控除されない |
名前に「特別」が付く給付は控除されない、と覚えておくと判断しやすくなります。算定基礎日額はボーナスをもとに計算する日額で、給付基礎日額とは別枠です。
計算例:休業60日で11万円が上乗せになる
給付基礎日額10,000円の会社員が、通院のため60日休業したケースで見ます。労災では最初の3日を除いた57日分が支給対象です。
- 休業(補償)給付:10,000円×60%×57日=342,000円
- 休業特別支給金:10,000円×20%×57日=114,000円
一方、加害者側に請求できる休業損害は実収入ベースで600,000円(10,000円×60日)とします。ここから労災の休業(補償)給付342,000円が差し引かれ、加害者側から受け取るのは258,000円です。
最終的な手取りを合計します。
- 342,000円(休業給付)+114,000円(特別支給金)+258,000円(加害者側)=714,000円
休業損害600,000円に対し、114,000円多く残りました。この差が特別支給金です。労災を使わずに加害者側だけへ請求していたら、この11万円は発生しません。
後遺障害が認定されると上乗せはさらに増える
症状固定後に等級が認定されると、障害特別支給金が加わります。14級なら8万円、12級なら20万円の定額です。これも賠償金から差し引かれません。
加えて、ボーナスをもとにした障害特別一時金も支給されます。年間賞与60万円なら算定基礎日額は約1,644円となり、14級(56日分)で約92,000円です。14級のケースでは8万円と合わせて約17万円が上乗せになります。
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労災と加害者側への請求をどう組み合わせるかで、手取りは大きく変わります。示談の場で保険会社から控除の説明を受ける前に、交通事故に強い弁護士へ確認しておくと安心です。
特別支給金は自動では振り込まれない
ここが最大の落とし穴です。特別支給金は申請しないと支給されません。ただし実務上、休業(補償)給付の請求書には特別支給金の申請欄が組み込まれており、通常はまとめて処理されます。
問題になりやすいのは、労災を使わずに加害者側の任意保険だけで治療を進めたケースです。この場合、そもそも労災に請求していないため特別支給金は1円も出ません。仕事中や通勤中の事故なら、労災の対象になるか労働基準監督署へ確認しておくことをおすすめします。
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過失があっても金額が変わらない強み
もうひとつの利点が、過失割合の影響を受けにくい点です。労災給付は被害者側の過失で減額されません。自分に3割の過失がある事故でも、給付基礎日額に応じた金額が支給されます。
加害者側への賠償請求は過失分だけ減額されます。過失がある事故ほど、労災を使う価値が相対的に高くなると考えられます。
FP2級の運営者が伝えたい注意点
見落としやすいのが請求の期限です。休業(補償)給付は支払われるべき日ごとに2年、障害(補償)給付は症状固定の日の翌日から5年で時効にかかります。示談交渉が長引いても、労災の請求だけは先に進めておくほうが安全です。
治療の継続や症状固定の時期については医学的な判断が必要です。必ず担当医にご確認ください。
まとめ
- 労災の特別支給金は賠償金から控除されず、実質的な上乗せになる
- 休業特別支給金は給付基礎日額の20%。60日休業で11万円前後
- 障害特別支給金は14級で8万円、12級で20万円の定額
- 労災に請求しなければ特別支給金は1円も出ない
- 労災給付は過失割合による減額を受けない
ここで挙げた金額は2026年度時点の目安であり、今後変更される可能性があります。個別の事案での取り扱いは事故の状況によって変わります。実際の判断は弁護士や社会保険労務士など専門家にご確認ください。
労災が使えない事故では、自分の保険がそのまま生活費の支えになります。今の契約で人身傷害や休業補償がどこまでカバーされるか、この機会に一括見積もりで確認しておくと安心です。
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