「非該当」と書かれた通知書を見て、手が止まっていませんか。痛みは続いているのに等級がつかないと、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益は、原則として認められません。14級9号が認められるかどうかで、受け取れる金額は200万円近く変わることもあります。この記事では、異議申立ての仕組み、公表資料で等級変更が約11%だった審査の内容と、異議申立てで何を見直すか、期限と時効の落とし穴を、FP2級の資格を持つ運営者が整理します。通知書を受け取ったばかりの方は、動き出す前に読んでおいてください。
異議申立ては何度でもできる。ただし同じ書類では覆らない
結論から書くと、異議申立てに回数制限はありません。費用もかかりません。納得できなければ何度でも申し立てられます。
ただし、前回と同じ書類を出し直しても結果は変わりません。審査するのは同じ損害保険料率算出機構だからです。覆すには、前回なかった医学的な資料を新たに加える必要があります。
非該当と14級9号で、受け取れる金額は約200万円変わる
なぜ異議申立てにこだわる価値があるのか。金額で見ると理由がはっきりします。40歳・年収400万円の会社員が14級9号に認定された場合の目安です。
| 項目 | 非該当 | 14級9号(弁護士基準) |
|---|---|---|
| 後遺障害慰謝料 | 0円 | 110万円 |
| 逸失利益 | 0円 | 約91万円 |
| 合計 | 0円 | 約201万円 |
逸失利益は「年収400万円×労働能力喪失率5%×喪失期間5年分の係数4.580」で計算しています。等級がひとつ認められるかどうかで、200万円前後が動きます。
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公表資料では等級変更は約11%。数字の対象を正しく確認する
損害保険料率算出機構の「自動車保険の概況」(2023年度版に掲載された2022年度実績)では、後遺障害専門部会の審査10,353件のうち、等級変更ありは1,111件でした。割合にすると約11%です。これは異議申立て全体の成功率ではなく、後遺障害専門部会で扱われた事案の数字です。出典:損害保険料率算出機構「2023年度 自動車保険の概況」
この数字だけで個別の見込みを判断することはできません。異議申立てでは、認定理由を確認し、新たな検査データや医師の所見など、判断を見直すための資料を追加できるかが重要です。
まず確認したいのが、手元にある認定結果の通知書です。そこには非該当とされた理由が書かれています。「症状を裏付ける客観的な医学的所見に乏しい」と記載されていれば、次に用意すべきものは所見です。理由を読み違えると、資料を集めても的を外します。
どの資料が足りないかの見極めは、独学だと時間ばかりかかります。異議申立ては期間も限られるため、認定結果の通知書を持って早めに弁護士へ相談しておくと安心です。
異議申立てでそろえたい資料
追加資料は、前回の認定理由に対する答えになっているかが基準です。むちうちで14級9号を目指す場合、次のような書類が使われます。
- 医療照会回答書(主治医に症状の一貫性や回復見込みを記載してもらう)
- 画像所見の再読影を依頼した報告書
- 神経学的検査の結果(初回時に未実施だったもの)
- 通院状況がわかるカルテや施術証明書
とくに医療照会回答書は結果を左右しやすい書類です。受傷当初からの症状の一貫性が読み取れるかどうかが問われます。ただし、どの検査を追加するかは医学的な判断が必要です。必ず担当医にご確認ください。
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審査期間は2〜3か月。時効の起算点に注意
異議申立ての審査には、外部の専門家が参加する審査会が開かれます。そのぶん初回より時間がかかり、平均で2〜3か月が目安です。医療照会が入ると半年を超えることもあります。
ここで見落としやすいのが時効です。後遺障害分の請求権は、症状固定日の翌日から3年で時効にかかります。異議申立てを繰り返しているうちに、期限が近づくことがあります。
さらに注意したいのが、事前認定(加害者側の任意保険会社経由)での異議申立てです。これは認定結果に対する不服の表明であり、自賠責保険への請求行為ではないため、時効の完成を止める効果はないとされています。時効が心配な段階では、被害者請求に切り替えて手続きする方法が検討されます。
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異議申立てで動かないときの次の手段
何度か申し立てても結果が変わらない場合、選択肢は2つ残っています。
- 自賠責保険・共済紛争処理機構への申請(第三者機関による審査。利用は1回のみ)
- 裁判所への訴訟提起
紛争処理機構は自賠責の判断が妥当だったかを審査する機関です。1回しか使えないため、資料をそろえたうえで臨む必要があります。順番としては、異議申立てを尽くしてから検討することになります。
FP2級の運営者が伝えたい注意点
異議申立てを弁護士に依頼すると費用が発生します。ここで効いてくるのが弁護士費用特約です。特約があれば、多くの契約で300万円まで弁護士費用が補償されます。200万円前後の増額を狙う手続きで、費用負担がほぼゼロになる意味は大きいといえます。
もうひとつ。示談を成立させた後では、等級が変わっても賠償金の再計算ができないのが原則です。認定結果に納得できていない段階で、示談書へサインしないことをおすすめします。
まとめ
- 異議申立ては回数制限なし・費用なしで何度でもできる
- 全国平均の認定率は約11%。覆すには新たな医学的資料が必要
- 非該当と14級9号では、受取額に200万円前後の差が出ることがある
- 審査期間は2〜3か月。症状固定から3年の時効に注意する
- 事前認定での異議申立てには時効を止める効果がないとされている
ここで挙げた金額や割合は2026年度時点の目安であり、今後変更される可能性があります。個別の事案で認定される可能性は症状や資料の内容によって変わります。実際の判断は弁護士など専門家にご確認ください。
弁護士費用特約が付いているかどうかで、異議申立てのハードルは大きく変わります。今の契約に特約が付いているか、この機会に一括見積もりで確認しておくと安心です。
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