修理しても事故歴がつくと車の価値は下がります。この「評価損(格落ち)」は請求できるのか、認められやすい条件(登録3年以内・骨格損傷など)と金額の目安(修理費の1〜3割程度)、立証方法をFP2級の事故被害者が解説します。
最終更新日:2026年7月5日
交通事故で車を修理しても、「修復歴あり」となった車は売却時の査定が下がるのが一般的です。この下がった分を「評価損(格落ち)」と呼びます。
「修理代は出たけど、車の価値が下がった分は誰も補償してくれないの?」——実は、条件を満たせば評価損として相手方に請求できる場合があります。ただし、保険会社の示談交渉では自発的に提示されることがほとんどなく、知らないまま示談してしまう方も少なくないようです。
この記事では、FP2級×交通事故被害者の視点から、評価損が認められる条件・金額の目安・立証方法を整理します。
※この記事は一般的な情報をまとめたものです。評価損の可否は個別事情で大きく変わるため、最終的には弁護士・保険会社にご確認ください。
この記事で確認できること
- 評価損(格落ち)とはどんな損害か
- 認められやすい条件(早見表)
- 金額の目安(修理費の何割か)
- 立証に使える「事故減価額証明書」
- 請求できないケースと示談前の注意点
評価損(格落ち)とは?修理代とは別の損害
評価損とは、事故車を修理しても残る「価値の下落分」のことです。大きく2種類に分けられます。
- 技術上の評価損:修理しても機能や外観が完全には戻らないことによる価値の低下
- 取引上の評価損:フレーム等の修理で「修復歴車」となり、中古車市場での査定が下がることによる価値の低下
実務で争いになるのは主に取引上の評価損です。修理代とは別枠の損害なので、認められれば修理費に上乗せして受け取れることになります。
なお、評価損は物損の話です。物損事故では慰謝料が原則認められないなど、人身事故とは扱いが異なります。
👉 関連記事:人身事故と物損事故の違いとは?慰謝料・示談への影響を解説
評価損が認められやすい条件(早見表)
評価損はすべての事故で認められるわけではなく、裁判例では次のような条件がそろうほど認められやすい傾向にあります。
| 項目 | 認められやすい目安 |
|---|---|
| 初度登録からの期間 | 3年以内(外車・国産高級車・人気車種は5年以内) |
| 走行距離 | 6万km未満 |
| 損傷箇所 | フレームなど骨格部分の損傷(修復歴車になるケース) |
| 修理費 | 高額であるほど認められやすい傾向 |
※2026年7月時点の一般的な傾向です。「3年を超えたら認められない」というルールはなく、経過年数が長い車で認められた裁判例もあります。
逆に、バンパー交換や板金塗装程度の軽微な損傷では、認められにくいのが一般的です。
金額の目安は「修理費の1〜3割程度」
評価損の金額に法律上の計算式はありませんが、裁判実務では修理費を基準に10〜30%程度を評価損と認めるケースが多いとされています。
計算イメージ
- 修理費50万円 × 20% = 評価損10万円
- 修理費80万円 × 30% = 評価損24万円
新車に近い・損傷が大きいほど割合が高くなる傾向があります。数万円〜数十万円の差になることもあるため、条件に当てはまる方は確認する価値があります。
なお、自分にも過失がある事故では、評価損も過失割合分が差し引かれます。過失割合の決まり方はこちらで整理しています。
👉 関連記事:交通事故の過失割合とは?決まり方と計算方法をわかりやすく解説
過失割合で揉めないためには、事故状況の記録も大切です。私はドライブレコーダーをつけていたことで、事故状況の説明がスムーズでした。まだの方は検討してみてもよいと思います。
👉 関連記事:ドラレコは本当に必要?交通事故で後悔しないための3つの理由
保険会社は自分からは提示しない
ここが評価損の一番の注意点です。
一般的に、相手方の保険会社が示談交渉で評価損を自発的に提示することはほとんどありません。修理代の話がまとまると、そのまま物損の示談へ進んでしまいがちです。
つまり、被害者側が「評価損を請求します」と主張しない限り、支払われないままになる可能性が高いということです。任意交渉で認めてもらうハードルは高く、裁判まで見据えた対応が必要になるケースもあります。
【評価損の請求に迷ったら】
評価損は「認められるかどうか」「修理費の何割か」の判断に専門知識が必要で、個人での交渉は難しい損害のひとつです。物損の交渉でも弁護士費用特約が使えるのが一般的なので、条件に当てはまりそうな方は早めの相談を検討してみてください。
👉 交通事故で弁護士に相談するタイミングを確認する
立証には「事故減価額証明書」という方法がある
評価損を請求するには、「価値が下がったこと」を被害者側が立証する必要があります。代表的な方法は次の2つです。
- 日本自動車査定協会(JAAI)の「事故減価額証明書」:事故でいくら価値が下がったかを査定して証明書を発行してもらう方法。査定は有料で、請求が認められなかった場合は査定料が自己負担になる点に注意が必要です。
- 中古車市場の比較:同型・同程度の走行距離で「修復歴なし」と「修復歴あり」の車両価格を比較する方法。
どちらの資料が有効かはケースによるため、弁護士に相談しながら準備するのが現実的です。
評価損が請求できないケース
次のような場合は、評価損の請求が難しいのが一般的です。
- 全損の場合:評価損は「修理」が前提の損害のため、全損では請求できません(この場合は車両時価額+買替諸費用の問題になります)
- リース車・所有権留保がある車:所有者はリース会社等のため、使用者からの請求には消極的な裁判例の傾向があります
- 損傷が軽微な場合:バンパー交換や板金程度では認められにくい傾向です
注意点
- 物損の示談前に請求する:物損の示談書にサインすると、原則としてあとから評価損を追加請求できません。物損は人身より先に示談することが多いため、タイミングに注意が必要です。
- 物損の時効は3年:評価損を含む物損の損害賠償請求権には時効があります。
👉 関連記事:交通事故の損害賠償に時効はある?人身5年・物損3年の起算点と注意点をFP2級が解説
- 弁護士費用特約は物損でも使えるのが一般的:評価損のような「金額は大きくないが交渉が難しい」損害こそ、特約の出番です。
👉 関連記事:【保存版】弁護士特約とは?使うべき?交通事故で損しないためのポイントをわかりやすく解説
よくある質問
Q1. 新車で納車1ヶ月の車をぶつけられました。評価損は請求できますか?
一般的には、初度登録から間もない車ほど評価損が認められやすい傾向にあります。損傷箇所や修理費にもよるため、修理前に見積書や損傷写真を残し、弁護士に相談することをおすすめします。
Q2. 10年落ちの軽自動車でも請求できますか?
経過年数が長い車や低価格帯の車は、認められにくい傾向があります。ただし一律に不可というルールはないため、ケースによります。
Q3. もらい事故(過失0)でないと請求できませんか?
自分に過失があっても請求自体は可能です。ただし過失割合分は差し引かれます。
Q4. 保険会社に「評価損は認めていません」と言われました。
任意交渉では断られることが多い損害です。裁判例では条件次第で認められているため、あきらめる前に弁護士への相談を検討してみてください。
まとめ
- 評価損(格落ち)は修理代とは別に請求できる場合がある損害
- 目安は「登録3年以内(高級車等は5年)・骨格損傷・修理費が高額」
- 金額は修理費の1〜3割程度が実務上の目安
- 保険会社は自分からは提示しないため、被害者側からの主張が必要
- 物損の示談前に請求しないと、あとからは難しい
「修理代さえ出ればOK」と思って示談すると、本来受け取れたはずの金額を逃す可能性があります。条件に当てはまる方は、示談前に一度確認してみてください。
【事故をきっかけに、保険の補償も見直しを】
評価損の交渉には弁護士費用特約が心強い味方になります。ご自身の保険に特約がついているか、車両保険の内容は十分か、この機会に確認してみてはいかがでしょうか。
複数社の自動車保険をまとめて比較できる無料サービスもあります。
👉 自動車保険の一括見積もり(インズウェブ)はこちらあわせて読みたい:交通事故後に車両保険で後悔しやすいケース|外す前に確認したいこと / 交通事故をきっかけに保険を見直す理由|確認したい補償とは
参考: 国土交通省、日本自動車査定協会、日本弁護士連合会 など
この記事は一般的な情報であり、個別の判断は弁護士・保険会社・公的機関に確認してください。
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